お客様のための商品であり、販路である、ということ

お客様のための商品であり、販路である、ということ

こんにちは。
昨今は、SNSやブログ、自社のブログ(このブログもそうですね)などを利用し、
気軽に様々な情報を自身で発信できるようになりました。
個人的(プライベート)な発信のみならず、
事業者の公式アカウントで、公式の情報を手軽に発信することが、
タダ同然で出来るのですからこれを利用しない手はありません。

さて、
今回はそんなSNSを利用なさっている事業者さんの、実際の発信内容を端で数多く見て来た経験から、特に「これはやってはいけない。」と断言出来る発信内容について書こうと思います。

結論から言います。
事業者やってはいけない発信内容→

特定店舗の特定バイヤーに向けた感謝の言葉全部

です。

※「自分の商品取り扱い第1号店のバイヤー」である場合は別です。
最初に扱って下さった最初のバイヤーには特別な感謝をすることはOKです。
理由はまたの機会に書きます。

この話はすでにいくつかの店舗で自社商品の取り扱いがある状態の事業者さんの話です。

具体的に言います。
例:「今月から博多の◯◯百貨店さんで当社の商品をお取り扱いしていただけることになりました。
こちらのバイヤーさんは非常に前向きでやる気に溢れ、
うちの商品を是非、と何度もラブコールを下さった、本当に素敵な人です。
限定品も企画段階から入ってくださり、とても素晴らしいモノに仕上がりました。」

はい、

これです。
これは完全にアウトです。

あなたは一体全体誰に向けて商品を売っているのですか?

と言われてしまっても仕方のない、本当にやってはいけない発信です。

なぜダメなのか?
バイヤーが気に入ってくれたから商売が始まった。
口座開設だって、イベントの計画だって、折り込み広告への手配だって、
全部バイヤーがやってくれた。
その手をかけ暇をかけたバイヤーに感謝の一つや二つしても良いじゃないか?

そう思われる方もいらっしゃるかも知れません。

全然違います。

バイヤーは確かに「きっかけ」ではあるかも知れません。
しかし、所詮は「きっかけ」でしかありません。
門を開けてはくれたかも知れませんが、
門が開いたこととあなたの商品が売れること、全く別問題です。
その商品が店頭に並んだ後、
その商品を売ってくれる人は誰ですか?
買ってくれる人は誰ですか?

まず、
事業者の中の人が、
特定の店舗の特定のバイヤーに特別な感謝の意を公の(SNSなど)場で述べているところを見て、
既存店舗、他の店舗のバイヤーはどう思うか想像したことありますか?

これを否定的に捉える人、店もあるのです。
むしろ、ハッキリ言えば、
ほとんどの店・バイヤーは「面白くない」と思うはずです。

「この店と取り組むことにしたんだな、つまり、ウチとはもうやらないって言う意味かな」

「こんな動きを水面下でしていたのか、何も言ってくれなかったな」

「限定品の話、うちが持ちかけた時は何も反応してくれなかったじゃないか」

「私だって一生懸命ラブコールして、売場だって用意したのに、こんな感謝されていない

などなど・・・。

事業者さん側からしたら、
何気ない、ただの社交辞令だったのかも知れません。
限定品も様々な要因が絡まってたまたま具現化したのかも知れません。
しかし、
他のバイヤーはその細かい理由を知る由もありません。

大したコミニュケーションを取っていないもの同士、
穿った見方をお互いしてしまうこと、たくさんあります。
人間の習性です。
疑心暗鬼が生まれ、悪い方に想像は働き、
発信した本人に対しても、商品に対しても、
裏切られたような気持ちになってしまう。愛せなくなってしまう・・・。

つまり、
このような発言はただ、
イタズラに既存店や他の潜在販路のバイヤー・担当者の心証を悪化させるだけなのです。

そして、
心証を悪くしたのは、
他店のバイヤーだけではありません。
ご丁寧にわざわざSNSで感謝の意を表明した特定のバイヤーが所属する店の担当者、
販売担当者だってあなたのことを嫌いになったかも知れません。
せっかく商売が新たに始まった、その店のです。
あなたのその発言は、商売が始まったと同時に「暗い影」を背負いこむことになったかも知れません。

なぜなら、
そもそも商品をやりたかった言い出しっぺはバイヤーではなくて、
売場の販売担当者だったかも知れません。
口座開設の手配から店頭の図面作成実務は全部バイヤーではなくて、
その売場担当者が請け負ったかも知れません。
その業務分担の内情わかっていますか?
その担当者にしてみたら、「頑張ったのは私であってバイヤーではない」
と言う思いが強くあるかも知れません。
それなのに、SNSで「バイヤーに感謝」、私のことには一言も触れてくれない・・・。

ネガティブな感情の芽はどこに生まれるか、
それをコントロールできないのに、なぜそんな発信をしてしまうのですか?

誤解していただきたくないのですが、
私がここでお話ししたかったのは、
小売の現場の生々しさ、コントロール出来ないヒューマン領域についての話ではありません。
ただ、

「お客様だけを見て、お客様のメリットだけを見て商売をしていれば、
特定のバイヤーに感謝する発言など出てこない筈だ」

と言うことを申し上げたいのです。

その特定のバイヤーを「アゲ」ることで、
あなたは何を獲得したいのでしょうか?
そのバイヤーをいい気分にしたかったのですか?
そのバイヤーに気に入られることで、継続その店舗で商売が可能になる、
と踏んだのですか?
それを言わなければ店に売って貰えない、そんなに自信が無い商品なのでしょうか?

ハッキリ言いますね。
そのバイヤーをいい気分にした分だけ、他の店のバイヤーの気分は下がってます。
バイヤー以外の担当者のテンションも下がってます。
気分の総量で言えば全体的にマイナスになっています。
それから、
そのバイヤーが例えば半年後に店頭から担当を外れた時、
あなたの商品はほぼ同時にその店頭から消えます。
往往にして、歪んた愛情の発露は歪んだ結末を生むものです。

あなたが、
その商品を売る上で見るべき、気を遣うべき相手を見誤ってる限り、
その商品が売れるようにはなりませんし、
ブランドが成長することもありません。

あなたは「その店のお客様にその商品を使えばどんなメリットをもたらすか」
だけを必死に考えれば良いのです。

そのためのSNSだし、
そのための発信なのです。

「今月から、博多の◯◯百貨店さんで当社の商品をお取り扱いしていただけることになりました。
福岡県初上陸です。福岡のお客様に当社独自のこんな◯◯な機能はぴったりだと思います。
より◇◯なものをお求め、と言われている博多のオシャレに敏感なお客様に向けて、
特別な商品もご用意しました。」

その場所(店)のお客様が求めるニーズと、商品が提供できるメリットを語ること。

ただそれだけに注力することで、
販路だけではなく、資材の発注先なども含めて、余計な感情の軋轢や誤解を生むことは無くなります。

モノを作り、それを販路に流し、売ってもらう。

この一連の流れの中では、多くの人々が関わります。
誰かが偉い、偉く無い、ではありません。
感謝すべき相手は「全員」なのです。

多くの店舗で年間何千万、何億単位で商売をなさっている大手メーカーさん、
ラグジュアリーブランド、化粧品メーカーなどをご覧いただければわかります。

彼らは絶対に特定の店舗だけを「アゲ」「サゲ」ることなどしません。
常に、その店舗に出店する際には「商圏」「顧客」に対して自分のブランドがどんな価値を提供できるか、
だけの文脈で自らを語ります。

もちろん、
中小零細でモノづくりをなさってる事業者さんが、
その存続に対して必死であることも、商売や売上に自信が持てないこと、
よくわかります。
ただ、だからこそ悪手を敢えて選ばないこと、そのための知識・行動が非常に大事です。

自分の商品がお客様の何を変えられるのか、
それを念頭に発信をすること。
今回は販促の視点も含めて、SNS発信の注意についてお伝えさせていただきました。

 

 

 

 

 

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